「自著を語る」シリーズ 連続企画「共鳴するポジショナリティ」開催報告(2)

本センターでは「自著を語る」シリーズ 連続企画「共鳴するポジショナリティ」を開催いたしました。第2回「中国の知的障害者とその家族―「新しい社会性」のエスノグラフィー」について、以下のとおり報告いたします。

中国の知的障害者とその家族―「新しい社会性」のエスノグラフィー

  • 日時:12月15日(金)17:00-19:00
  • 開催形式:対面(国際関係学部4階3314室)+Zoom
  • 講演者 奈倉京子(国際関係学部・教授/CEGLOS研究員) 
  • 司会・対談者 二羽泰子(国際関係学部・講師/CEGLOS研究員)

 まず、二羽泰子研究員より本連続企画の趣旨説明がされ、前回(第一弾)報告された、日本の障害のある子をめぐる文化、制度との比較を試みることが提示された。 

 つづけて、奈倉京子研究員の報告へ移り、まず、障害者研究を始めた背景、問題意識、調査者としての立場性について語られた。次に、本書の2つの問い―①2000年代以降の中国のポスト社会主義的状況が、障害者とその家族にどのような影響をもたらしているのか。②中国の障害者とその家族の「新しい社会性」とは何か。―が提示され、問いを探究するための方法が紹介された。具体的には、家族以外の多様な他者とのかかわりが必要とされる障害者とその家族を対象に、障害のある家族成員のケアは家族以外の「中間的領域/組織」に頼ることができるのか、あるいは家族へ全面的に依存せざるを得ない状況にあるのかといったことを考察し、それより「新しい社会性」の内実を記述することである。このような考察を通して、中国独自の社会主義が形成してきた社会・文化に生きる個々の障害者とその家族の生の営みに焦点を当て、個人と家族、家族と社会/国家の結びつきのあり方を検討し、考察の結果についてまとめられた。 

 報告後、二羽研究員との対談では、調査中に直面した〈痛み〉をどう乗り越えたのか、「インターセクショナル・カルチャー」と「共生の文化と」との関連性は何か、日本と中国における専門家が当事者へ及ぼす作用の相違は何か、障害者権利条約の実施における両国の共通点等について議論された。今回、40名(教員、院生、学部生)の参加があり、参加者からも多くの質問、コメントが出された。

文責:奈倉京子

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