「自著を語る」シリーズ 連続企画「共鳴するポジショナリティ」開催報告(1)

本センターでは「自著を語る」シリーズ 連続企画「共鳴するポジショナリティ」を開催いたしました。第1回「排除を乗り越える文化の探究」について、以下のとおり報告いたします。

「排除を乗り越える文化の探究」

  • 日時:11月24日(金)17:00-19:00
  • 開催形式:対面(国際関係学部4階3314室)+Zoom
  • 講演者 二羽泰子(国際関係学部・講師/CEGLOS研究員) 
  • 司会・対談者 奈倉京子(国際関係学部・教授/CEGLOS研究員) 

 まず、奈倉京子研究員より本連続企画の趣旨説明がされた。研究者にとって身近な問題を扱う際にはポジショナリティ(=立場性)を意識せずに取り組んでしまうと研究して成り立たなくなってしまうことがあり、一方で、身近な問題を研究する時の覚悟は容易ではない。本企画では、二人の研究者が障害とかかわる〈当事者〉という立場にありながら障害を対象に研究してきた経験をふりかえり、対象をよく知っているからこそともなう〈痛み〉や〈葛藤〉とどのように向き合ってきたのかを語る。〈共鳴〉は、①それぞれが対象と共鳴すること、②二人の研究者が、それぞれの障害に関する研究を通して〈共鳴〉し合うこと、を意味する。

 つづけて、二羽泰子研究員より、2つのご論考―①「終わりの見えない支援―特別支援教育におけるマイノリティをめぐるジレンマ」、②Inclusion and Diversity: Communities and Practices Across the World―をもとに、報告がおこなわれた。まず、①について、教育現場における支援システムによって「障害者」が生産しつづけている「降格する貧困」の現象が語られた。「障害児」と「なった」子どもたちは、障害児手帳を取得し、障害児として生きるか、困難を抱えたまま健常児として生きるかの葛藤に迫られている。こうした排除的な仕組みを変革するためには学校内外の多様な人が連携する必要がある。そこで②の内容へ続く。②では、非差別部落の子どもたちを対象とした「解放教育」と、障害児を対象とした「障害児教育」の接点を見いだし、それぞれの社会運動で提唱された「解放文化」と「ノーマライゼーション文化」の双方を共存させ、さらにはそれらを超えて形成されうる「インターセクショナルな文化」(intersectional culture)の可能性が検討された。障害や部落といったカテゴリーによる差異を強調するのではなく、「その時にしんどい子どもの差異を強調して真ん中に据える」ことが重要であることが述べられた。

 報告後、奈倉研究員と対談をおこない、〈当事者〉という立場でおこなったフィールドワークで感じたこと、及び「制度」と「文化」の関係や「交差性」について議論した。その後、会場の聴講者からコメントや質問が出され、活発な意見交換がなされた。二羽研究員が調査してきた大阪府豊中市でなぜ運動の成果は実り、制度へ影響を与えることができたのか等の質問について、明快な応答がされた。21名(教員、院生、学部生)の参加があり、大変充実した議論がおこなわれた。

 文責:奈倉京子

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