「グローバル・スタディーズ(Global Studies)」とは、国際関係学、国際政治学、国際経済学、国際法学、国際社会学、人類学、地域研究、カルチュラル・スタディーズ等の旧来の国際的社会科学研究の枠組みを超えて、現在、地球上を席巻しつつあるグローバリゼーションの現象を、従来のような地域的区分に囚われず、グローバルな視野のもとに解明しようとする諸学の連携機軸を意味する。
国家を前提として、その国家間の関係を捉える「国際関係学」は、確かに一国家単位の研究を凌駕し得たものの、国民国家の枠組みそれ自体を容易に乗り越えてしまうグローバリゼーションの猛威を前にして、もはや、有効な研究枠組みを提供できなくなりつつある。また、「地域研究」は、確かに一国家単位の研究を超えて、「東南アジア」、「欧州」等、地域的な広域国家連合体を研究対象として措定したが、そのような地域的国家枠組みをすらいとも簡単に突破してしまうグローバリゼーションの動向を十全に把握するには至っていない。グローバル・スタディーズは、このように、世界各地のフィールドにおいて、各分野の先鋭的な研究者が、従来の国際関連諸学を突き詰め、その限界につきあたり、そして、それを乗り越えるべく試行錯誤してきた結果、誕生するに至った最新鋭の複合的学問領域である。
しかしながら、地域区分に基づく旧来のような「地域研究センター」が、既に全国の大学に数多く存在するのに対して、地域区分を超えた新しい分野であるグローバル・スタディーズは、世界的にみても、十分な研究拠点を確保しているとは言い難い状況にあり、イリノイ大学のCenter for Global Studies 等、ごくわずかな先例を数えるに過ぎない。
奇しくも、全国の国公立大学の先陣を切って開設された本学国際関係学部は、20周年を迎えた現在、その研究・教育枠組みを再点検し、謙虚な反省を踏まえて、根本的刷新を断行すべき時期にさしかかっている。国内外の研究者と、討論を重ねた結果、われわれは、マクロ・レヴェルの事象を扱う国際関係学、国際政治学、国際法学と、ミクロ・レヴェルの事象を扱う国際社会学、人類学、カルチュラル・スタディーズ等の両者を結びつける「連携機軸」が従来の国際関係学部には、決定的に欠如しており、これを見出すことが将来へ向けての突破口を開くと認識するに至った。討議の結果、最終的に見出された「グローバル・スタディーズ」は、まさにこの連携機軸となる枠組みであり、とりわけ、本センターのグローバル・スタディーズは、マクロ・レヴェルの事象とミクロ・レヴェルの事象を連携させて捉える「スケーラビリティ・アプローチ(scalability approach)」を研究手法上の特色として打ち出している。
本センターは、このスケーラビリティ・アプローチを基調としながら、従来の「国際関係」を冠した研究・教育機関において行われてきたようなたんなる地域情報の断片的な収集や教養主義的紹介に留まらず、最新鋭の理論と実践的な調査・研究方法論に立脚して、グローバリゼーションが世界各地で引き起こす現実的な諸課題に真っ向から対峙し得る包括的な総合的研究の拠点構築を目指すものである。
今日、グローバル・イッシューと呼ばれるような貧困と南北格差是正の問題、開発と国際援助協力の問題、地球環境問題、電子メディアによるグローバル・ネットワークと情報格差、人権擁護、越境移民と民族間紛争の問題等が叫ばれるようになって既に久しいが、その問題点に対する解決策を見出すことは、いかなる地球市民にとっても、喫緊の課題と言わねばならない。
もちろん、わが静岡県も、このグローバリゼーションが引き起こす諸問題と全く無縁ではあり得ない。県内に数多く居住する在日外国人との多文化共生社会の実現等、地域に根ざした大学の在り方を追求する本学が、その調査・研究の技法を最大限に活用して取り組むべきグローカルな課題は、文字通り、山積しているといわねばならない。
本センターでは、研究員がこれまで研鑽してきた国際的調査・研究の技法や知見を駆使することによって、グローバリゼーションが引き起こすこうした現実的諸問題の解決に当たると同時に、研究情報の集積・連結拠点(HUB)として、世界規模の交流を深め、新たな地球市民像を、静岡の地から全世界に向けて発信することを企図している。
ここに、全国の大学に先駆けて、国内初となる「グローバル・スタディーズ」の研究拠点センターを本学国際関係学研究科に開設することにより、地域的枠組みを超えたグローバリゼーションについての国際的調査・研究センター構築という未曾有の課題に挑戦し、再び、全国の国際関係学を先導する研究拠点としての立場を、復権することを目指すものである。
センターが取り組むプロジェクト
グローバル・ハブ・推進プロジェクト
グローバリゼーションに関する世界各地の実証的な調査・研究・教育情報を、ハブとして集積=連結することを推進し、静岡の地から発信する「グローバル・コモンズ(global commons)」として、地球社会へ連結することを目指す。
グローバル共同研究プロジェクト
学内外の研究者と共同で研究プロジェクトを主催する。研究成果は、研究期間内に、単行本や学術雑誌の企画特集号等として刊行する。また、随時、それに関連した各種公開シンポジウム、国際シンポジウム、国際ワークショップ等を、本センター主催で開催する。グローバル個人研究プロジェクト
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グローバル個人研究プロジェクト
グローバル個人研究プロジェクトは、研究員が単独で主催するプロジェクトである。ただし、個人プロジェクトの場合にも、研究成果については、本センター主催のセンター定例研究会、センター研究報告会等の機会に、口頭発表する。
静岡県グローカル・ハブ・プロジェクト
静岡県内の各種行政・市民団体、企業等と連結し、より大きな単位のネットワークを構成することによって、地域社会におけるグローカルな諸問題に協同で取り組む。このようなプロジェクトを、「静岡県グローカル・ハブ・プロジェクト」と呼び、この遂行を通じて、地域に開かれた大学の在り方を実現する。
グローバル・リーダー育成プログラム
プロジェクトを通して学んだ調査・研究技法と知見を駆使して、グローバル・イッシューの解決に率先して当たり、地球市民を先導するリーダーとしての役割を担い得る人材を、静岡の地から輩出する。