本センターは、2015年1月22日(木)14時40分から、愛知大学国際中国学研究センターとの共催で、公開講演会「現代中国における「民族服装」問題」を開催いたしました。
中国人にとって服は、自己表現を意味するだけでなく、文化の表象として意味や革命の表象としての意味がありました。20世紀、服は個人が自由に選択できるものではなく、「中山服」や「軍便服」など、国で統一されたものを着ていたことが紹介され、それを揃って着用している民衆の姿が印象的でした。服は、イデオロギーの象徴であり、等級制を反映しているものであったことがわかりました。
改革・開放以降、人々の衣生活に変化が起きます。服は自己主張・表現のツールとなったのです。2001年、上海APEC開催時に、どんな民族衣装で「中国式」を表現するかが課題となり、「新唐服」が開発されました。2004年になると、「漢服」ブームがネットを通して広がっていきました。「漢服」は、漢民族の血統継承と漢文化の正統性を強調しており、漢民族ナショナリズムの性格をもっています。同時に若者が「中国伝統の服」を古代(華夏)に求める運動として注目されています。
講師の周教授による上記の報告・解説に対して、コメンテータの富沢研究員からは、日本やインドネシアの民族衣装に関する観念や運動が紹介され、それらと中国のそれとの比較検討が提案されました。「漢服」運動の共通項として、高次元の抽象性を備えたシンボルとして想像/創造されたものであること等の意見が出されました。
21世紀初頭に中国の都市部では、少数の若者を中心に「漢服復興運動」が勃興し、現在も活発に活動しています。少数民族の多彩な民族衣装を意識し、漢民族の民族衣装を構築しようとするこの社会的・文化的運動をどう理解すべきでしょうか? 現代中国における「民族服装」問題の由来、その歴史的経緯および中国人の「民族服」/「国民服」作りの試行錯誤を整理します。それにより、今もなお依然として中国社会を悩ませつづけるこの問題の内的ジレンマを明らかにし、中国人の「民族服装」をめぐる様々な文化的実践やその問題点を分かりやすく解説します。